自然から授かった、心の持ち方とこれから
風月堂 鈴木 由美子さん
深い魅力を伴走して伝える、町のハブとしての存在
風月堂の鈴木さんは、美味しいお菓子を提供するだけでなく、訪れる人々の心に温かく寄り添う「町の案内所」のような存在です。「1日の短い滞在では、この町の深い魅力は伝わりきりません。だからこそ、私たちが伴走して教えてあげたいんです」と彼女は語ります。毎年来てくれるリピーターの念願を叶えるため、地域に住む「シマエナガのおじさん」を手配し、特別な観察ツアーを実現させたエピソードは、彼女のホスピタリティの深さを物語っています。イラストレーターや写真家など、川湯の魅力を発信する多様な人々が風月堂に集い、彼女を中心にして「川湯大好きパワー」が波紋のように広がっていく。鈴木さんはまさに、この町のコミュニティのハブであり、人と人を繋ぐ温かな結節点なのです。

他者を変えるのではなく、自分が変わるという心の切り替え。
長く店を続けていれば、時には理不尽な苦情を受けることもあります。しかし鈴木さんは、自らホテルに掛け合いに行き、地域の仲間と連携して真摯に対応することで、お客様の怒りを鎮めた経験を持っています。かつて自律神経の不調を経験した彼女は、「他人の心を変えるのは難しい。だから自分が変わる方向に切り替える」という確固たる哲学を身につけました。無理に自分を広げず、できる範囲で町を愛し、他者を思いやる。時にはお客様からの温かい言葉に慰められ、互いに元気づけ合う。彼女のそのしなやかで強い心のあり方は、慌ただしい現代社会を生きる私たちにとって、日々のストレスや人間関係とどう向き合うべきかという大きなヒントを与えてくれます。


利他の心と、世代を超えて循環する感謝のバトン。
「ここで商売を続けてこられたのは、本当にたくさんの人に助けてもらったからです」と、鈴木さんは何度も感謝の言葉を口にします。その恩返しのようでもあり、自身の生きがいでもあるのが、若い世代との関わりです。「若い子たちから役割をもらい、期限までにやり遂げることで刺激を受けています。私たちの役割は、頑張る若い人たちの背中を押すこと」。教える・教えられるという一方通行ではなく、互いに高め合い、支え合う美しい関係性。鈴木さんと共に歩く朝の散歩は、単なるコースのない自然観察ではありません。利他の心で町を慈しみ、日常の変化を愛し、周囲の人々を優しく照らす彼女の「生きる哲学」に触れることで、参加者自身の心に静かな灯りがともる、かけがえのない時間となるのです。

