気がつけば、マチのためになることを。
ユナイト 須田 洸さん
自転車旅で体感した、奇跡の泉質と終わらないポテンシャル。
20代半ば、自転車での北海道一周の旅の途中で偶然たどり着いたのが川湯温泉でした。1日80キロを漕ぎ、疲労困憊の身体を癒した時の衝撃を、須田さんは今も鮮明に覚えています。「足が驚くほど軽くなった。温泉が違うだけで、こんなに回復力が違うのかと驚きました」。心を動かされたのは、泉質の凄さだけではありません。まちで声をかけてくれた地元の人々と共に公衆浴場の湯に浸かり、温泉街の歴史やアイヌの伝承を聞く中で、彼はこの町の不思議な引力に引き込まれていきました。「温泉の泉質、寂れ具合、そして土地のポテンシャルの高さ。この矛盾の大きさが、いつか爆発を起こすんじゃないかと感じたんです」。自ら商売を始めるならここしかない。その直感が、彼を川湯温泉へと呼び戻しました。

ゼロからの居場所作りと、自分がやるしかないという変容。
移住後、空きテナントが見つからない壁にぶつかりながらも、ライダーハウスでの間借り営業などを経て、念願のライブとお酒が楽しめる店「ユナイト」をオープン。最初は夜だけの営業でしたが、ランチ難民が多い現状と、隣の食堂の店主が手術直後にも関わらず店に立つ姿を見て、「自分もやらなきゃいけない」と昼の営業も開始しました。「若い人が少なく、新しい人が入ってくる気配もない。だから自分がやるしかなかった」と語る須田さん。生き残るため、まちを盛り上げるための試行錯誤の中で生まれた事業の展開は、今や飲食店の枠を超え、観光案内や移住相談、持ち込み企画のライブなど、川湯の多様性を象徴する場として機能しています。



「ハブ」としての役割と、これから。
「嘘をつかず、できることとできないことを率直に伝えること。それが一番話が早い」。移住者として地域に溶け込む難しさを知るからこそ、須田さんは誠実さを何より大切にしています。現在、彼は先輩住民たちから信頼され、彼らの声を聞いて適切な人へと繋ぐ「橋渡し役」を自認しています。「若いやつにしかできない特権だし、自分で見つけた仕事だから思い切りやるだけです」。明確な5年後、10年後のビジョンよりも、彼は今、この町を共につくる「仲間」を探しています。「次に何かやりたいと来る人がいれば、全面的に協力したい。この町はどんな人でも受け入れられる器があるから」。彼の存在そのものが、川湯温泉の未来を切り拓くハブとなっているのです。

