大自然の中にある、宿として。
KKRかわゆ 支配人 倉嶋 和誉さん
20年ぶりの帰郷。変わりゆく町と変わらぬ情熱。
平成10年、かつて国鉄の保養所「白樺荘」だった施設を引き継いだKKRかわゆに赴任した倉嶋さん。その後、箱根や新潟など全国各地を巡り、昨年の夏、実に20年ぶりに川湯の地へと戻ってきました。しかし、再会した故郷の姿に彼は言葉を失いました。「昔は宿が10軒以上あり、観光案内所もあって賑わっていましたが、何もなくなってしまっていて、本当に驚きました」。施設の独立採算が厳しさを増す中、「なんとかこのエリアを盛り返したい」という強い危機感と使命感が、彼を突き動かしました。宿の魅力に甘んじるのではなく、弟子屈の大自然と共にある宿として何ができるか。その問いに対する彼なりの答えが、自ら車を運転し、お客様を摩周湖の夜へと案内する「星空ツアー」だったのです。

自らの感動を原動力に。ゼロから学んだ星空の魅力。
今年から本格始動した星空ツアーは、OTA(オンライン旅行会社)などを通じて瞬く間に反響を呼び、9月までで120人以上の予約を抱える人気企画となりました。しかし、倉嶋さんにとって星空ガイドは全くの未経験。「自分でプラネタリウムを見に行ったり、本を読んで勉強したり、他のガイドの方のツアーに参加したりしてクオリティを上げています」と、実直に語ります。彼をそこまで駆り立てるのは、20年前に自身が摩周湖で体験した圧倒的な感動です。自然豊かな地で育った彼でさえ心を奪われた、降るような星空。「あんな感動をお客様にも味わってほしい」という純粋な想いが、夜の摩周湖へと向かう原動力となっています。

星が繋いだ地域の人々との新たな縁。
「星空を人に説明しようと思うようになってから、地域の方との繋がりが強くなったような気がします」と倉嶋さんは相好を崩します。川湯の歴史、町の生い立ち、自然の背景。星空の解説に深みを持たせるため、地域の人々に教えを乞う中で、かつて郵便局で働いていた方など、多様な人生を歩んできた人々との新たな出会いが生まれました。星空ツアーは、お客様を宇宙の神秘へといざなうだけでなく、倉嶋さん自身を川湯という町の深い魅力へと再び結びつける架け橋となったのです。「360度、圧倒的な星空ですよ」と少年のような瞳で語る倉嶋さん。彼が見上げる夜空には、美しい星々の輝きとともに、川湯の町の未来を照らそうとする静かで確かな希望が瞬いています。
