情報発信局から

短く美しい季節

幼い頃、秋になると、ベッドになるまで落ち葉を集めてその上で昼寝をしたり、どんぐりを見つけて拾ってはどれが一番綺麗か見比べたり、真っ赤な葉っぱが欲しくて木に登ったりしていました。そこは私にとって宝の庭でした。

現在の川湯園地が今の形になる前、そこには高さ3メートル程の小さな山が3つあり、友達や妹と遊ぶ時は、どの山を自分の基地にするかじゃんけんをしたものです。

3つあるから、硫黄山、かぶと山、ぼうし山と私たちは呼び、秋にその硫黄山へ登ると目の前にナナカマドの赤くコロコロと可愛い実があって、はしゃいでいた事を思い出します。

あの頃いつも走り回っていた園地は、今は歩いて、見る、自然の姿に整備され、いっぱい冒険して見つけた木がこんなに近くにあったんだと思ったくらい、子供の頃とは違う自然の近さを感じています。森の色彩変化を日々感じられる今も変わらない場所です。

何もないと言われた宝の庭は、エゾヤマザクラ、エゾマツ、トドマツ、シラカバやヤマブドウ、もちろん草花も、書ききれない植物の宝庫です。

いつでもすぐそこで聴こえてくる鳥たちの歌声。エゾシカやキツネ、エゾリスやモモンガにも出会える森。一生懸命木の実を抱えて家路を急ぐリスに会えた日は、とっても可愛くて心が弾みます。

植物も動物たちもみんな、冬支度を始める季節です。

今年も可愛い赤い実が至る所で季節に彩りを与えています。硫黄山へ向かう道路脇のススキが秋を物語り、黄色い葉の間から見える硫黄山、かぶと山、ぼうし山の優しい姿に魅せられます。川湯から屈斜路湖へ向かう道は紅葉トンネル。赤と黄と空の青のコントラストが眩しい。紅葉と夕陽が屈斜路湖に光る景色は息をのむ美しさです。風の匂いは冬へ向かっています。

さぁ、短い秋の宝探しへ出掛けてみませんか。

person-ide

いなか家 源平

井出 遥

北海道弟子屈町川湯温泉出身。居酒屋「いなか家 源平」は1977年創業。川湯温泉の好きな温度は高温。